アプリ開発日誌
2025.06.20
Whisper×ChatGPTによる設計業務の革新 ~ミーティング音声から設計ドキュメントまで、生成AIを活用した業務の大幅な効率化~

こんにちは。ディレクターの杉本崇徳です。
近年、AI技術の進化により、業務効率化の可能性は飛躍的に広がっています。弊社においても、会議録の作成から設計ドキュメントの構築に至るまでの一連の流れにAIを積極的に取り入れることで、大幅な作業時間の削減と品質の安定化を実現しております。
本記事では、実際のプロジェクトにて導入している「Whisper × ChatGPT」を活用した業務プロセスについて、その具体的な手法と効果をご紹介いたします。
会議音声から始まる設計プロセス
開発プロジェクトにおいて最初の要となるのが、要件定義や仕様検討などの会議内容の正確な記録です。これまで、議事録作成は担当者の手作業に頼っており、時間と労力を要する業務の一つでした。
そこで弊社では、OpenAIが提供する高精度の音声認識モデル「Whisper」を活用し、会議の音声データを自動でテキスト化するプロセスを構築しました。Whisperはノイズ耐性に優れ、複数人が発言するような会議録にも柔軟に対応できます。
このステップにより、まず「正確な会話ログ」を取得することが可能になります。
生成AI(ChatGPT)による議事録への整形
Whisperによってテキスト化された会話ログは、まだそのままでは議事録としては使いにくい状態です。そこで次に、ChatGPTを活用し、話者ごとの発言を整理した「議事録」の文章に整形します。
例えば、以下のような形式に変換します:
議事録
1.ログインの仕様について
・ログイン情報はメールアドレス/パスワードを利用する
・パスワード忘れの動線を作る
(以下略)
ChatGPTを利用することにより、議事録として利用できるだけでなく、次の工程である機能抽出やドキュメント作成にも非常に役立ちます。
議事録から機能一覧マークダウンへ
整形された議事録をもとに、ChatGPTは自動的に「機能一覧マークダウン」を作成します。たとえば、上記の会話からは以下のような機能が抽出されます:
# 機能一覧
## ログイン
- ログイン情報はメールアドレスとパスワードを使用
- ログイン後、TOPページへ自動遷移
- パスワード再設定画面へのリンクを設置
## パスワード再設定画面
- メールアドレスを入力し、パスワード再設定メールを送付
(以下略)
この形式にすることで、関係者が機能全体を俯瞰でき、設計フェーズに必要な材料が一目で把握できます。
機能一覧から設計マークダウンへ
さらに、この機能一覧をもとにして、設計者向けの詳細設計ドキュメント(Markdown形式)への変換も生成AI(ChatGPT / Cursor等)が行います。画面構成やパラメータ、バリデーション、エラーハンドリングなどの設計要素を構造的に出力できるよう調整しています。
# 画面設計
## ログインページ
### 入力欄
- メールアドレス
- テキスト形式
- パスワード
- テキスト形式、自動マスク
### ボタン
- ログイン
- 正常:ログインし、TOP画面に遷移
- 異常:エラーを表示し、ログイン画面を再表示
(以下略)
このように、AIが音声データから設計書のベースまでを自動生成することで、ヒューマンエラーの軽減とスピードアップを実現しています。
実運用におけるメリット
このAI活用プロセスには、以下のような利点があります。
- 時間短縮:会議録作成や設計資料の初稿作成にかかる時間を従来の1/3以下に削減。
- 品質向上:人為的な抜け漏れを防ぎ、仕様の過不足が減少。時間短縮した工数を品質を高める作業に充てる。
- トレーサビリティ確保:発言→要件→機能→設計のつながりが明確に。
特にプロジェクト初期段階におけるドキュメント作成の負担を大きく軽減でき、チーム全体の生産性向上につながっています。
実運用における懸念
WhisperやChatGPTによる議事録整形・設計文書化には、決定事項の抜け漏れや表現のニュアンスが正確に反映されないといったリスクが伴います。また、設計意図の細かいニュアンスがAIによって十分に読み取れないケースも想定されます。
改善策としては以下のような対応が有効です:
- AIによる出力後に、設計担当者が内容をレビュー・補正する体制を整えること
- 特に重要な会議では、ファシリテーターが要点を明確にしながら進行し、AIの認識精度を高める工夫を行うこと
これにより、AI活用の恩恵を受けつつ、品質と正確性の担保を両立できます。
弊社は20年にわたりスマホアプリを中心に400件を超える実績がありますので、知見を活かした「人によるチェック体制」もしっかり構築しております。
まとめ
AIの力を活用すれば、開発現場における「お客様要望のヒアリングから設計ドキュメントまで」の流れはここまで自動化できます。WhisperとChatGPTを組み合わせることで、エンジニアやPM、ディレクターの時間を創造的な業務へシフトさせることが可能となります。
今後も弊社では、お客様にさらなる価値を提供するため、業務プロセスのさらなる効率化と品質向上を目指し、AIの活用を積極的に推進してまいります。