AIへのデザイン指示の書き方、「いい感じに」を具体化する4原則
チラシやSNS画像をAIに作らせて、「もっといい感じに」と打ち直す。ところが返ってくるのは配色ごと変わった別案で、気に入っていた部分まで消えている。そんな往復を繰り返していないでしょうか。
社内にデザイナーはおらず、チラシもSNS投稿も社内資料も自分で作るしかありません。それなのに、何を直してほしいのかを自分でも言葉にできない。
必要なのはセンスではなく、指示に使える言葉です。覚える見方は4つだけで、今日の提出物からそのまま使えます。
なぜ「もっといい感じに」ではAIのデザインが直らないのか
「もっといい感じに」
そう打ち直したのは、今日で何回目でしょうか。案が変わらない原因は、AIの性能でもあなたのセンスでもなく、指示の中身にあります。
「いい感じに」「おしゃれに」は、出来上がりへの評価です。どこをどうするかという情報が、一文字も入っていません。「おしゃれに」を「かっこよく」に言い換えても、渡した情報の量は増えないままです。
同僚に「例の資料、いい感じにしといて」と頼むのと同じです。受け取った側は、直す箇所を決められません。いちばん無難な動き方は、全体を作り直すことです。だから、気に入っていた部分まで消えた別案が返ってくるのです。
2025年度の調査では、生成AIサービスを使った経験がある人は日本で58.8%まで増えました。ただし種類別に見ると、画像・動画生成AIサービスの利用経験は16.3%にとどまります(総務省)。テキスト生成AIの55.0%と比べれば、見た目を作らせる指示に慣れている人はまだ少数派なのです。

同じ2025年度の調査で、テキスト生成AIを使わない理由に「使い方がわからない」を挙げた人は、日本が38.8%。米国(18.5%)、ドイツ(16.5%)、中国(32.9%)を上回り、4か国中でもっとも高い割合でした(総務省)。
そのうえで、素人っぽく見える原因の多くは、色や書体の趣味ではなく要素の置き方にあります。置き方なら、位置と間隔と大きさという言葉で言い表せます。ツールを細かく操作できなくても、指示文だけで動かせる範囲だということです。
曖昧な感想を指示文に変える、対象と方向と量の書き方
原因が言葉の側にあるなら、直すのも言葉です。頭に浮かんだ感想を、そのままAIに送れる一文へ書き換えていきましょう。
指示文に入れる要素は3つだけ。どの要素を(対象)、どうする(方向)、どれくらい(量)です。1つでも欠けると、欠けた分をAIが解釈で埋めるため、返ってくる案が毎回ぶれます。
たとえば「余白を空けて」には、対象も量も入っていません。「見出しと日時の行の間隔を2倍にして」なら、3つがそろっています。

実際の言い換えは、こうなります。
| 頭に浮かぶ言葉 | そのまま送れる指示文 |
|---|---|
| ごちゃごちゃしている | 関連する項目をまとまりにして、まとまり同士の余白を2倍に |
| なんか素人っぽい | 文字の種類を2つまでに、色は基調色と強調色の2色に |
| もっと見やすく | 本文の文字を1.2倍に、行間を1.5行分あけて |
| どこが大事か分からない | 申込締切の1行だけ本文の2倍に、他の強調はやめて |
| なんとなく窮屈 | 上下左右の余白を1.5倍にして、文字の量は変えないで |
つまり右側の列は、難しい言葉を1つも使っていません。左側の感想に、対象と方向と量を書き足せばこの形になります。
量は感覚語ではなく、倍率か数値で書いてください。厳密な数値である必要はなく、比較の基準を示すことに意味があります。
対象は、画面を見ながら指させる呼び名で書きます。「上のほう」では、AIと自分が同じ場所を見ているのか確かめられません。「見出しの下にある日時の行」と書けば、返ってきた案を見て、指示が届いたかを自分で判定できます。
近接・整列・反復・対比を、AIへの指示文に翻訳する
対象と方向と量の形は分かっても、いざ自分のチラシを開くと「で、結局どこを直せばいいのか?」と手が止まります。ここで効くのが、違和感を切り分ける4つの見方です。
近接・整列・反復・対比の4つは、デザイナーではない人に向けてRobin Williamsが書いた『ノンデザイナーズ・デザインブック』が広めた枠組みで、名刺やチラシ、パンフレットの実例で解説されています(マイナビ出版)。名前を覚える必要はありません。目の前の違和感が4つのどれかに当てはまると分かれば、それで足ります。

関係のある情報を近づけ、無関係な情報は離す
チラシで日時、場所、申込方法が均等に散らばっていて、どれとどれが一組なのか分からない。これが近接の問題です。
指示例は「日時と場所と申込方法を1つのまとまりにして、そのまとまりと他の要素との間隔を、まとまり内の行間の2倍にして」
余白には、情報の切れ目を示す線の代わりという役割があります。書類を種類ごとにクリップで留めるのと同じで、近くにあるものは一組だと、読む人は無意識に受け取ります。
左端を1本の線にそろえる
社内資料でよくあるのは、中央ぞろえと左ぞろえが混ざって落ち着かない状態。これが整列の問題です。
指示例は「見出しと本文と画像の左端を1本の線にそろえて、中央ぞろえはタイトルだけに限定して」
そろえる線は、少ないほど整って見えます。見えない縦線が1ページに3本も4本もあると視線が左右に動かされ、読む人はそれを落ち着かなさとして感じ取ります。
同じ役割のものは同じ見た目で繰り返す
SNS投稿の連作なのに1枚ごとに雰囲気が変わる、社内資料でページごとに見出しの位置が動く。これが反復の問題です。
指示例は「3枚とも見出しの位置と文字サイズと帯の色を同じにして、写真と本文だけ差し替えて」
同じ見た目が続くと手抜きに見えるのでは、と心配になるかもしれません。実際は逆で、繰り返されるほど「これは同じシリーズだ」と伝わり、読む人は中身のほうに集中できます。
重要な1行だけ、はっきり差をつける
どこが結論か分からない資料の原因は、差がないことよりも、差が中途半端なことにあります。これが対比の問題です。
指示例は「結論の1行だけ本文の2倍の大きさにして、他の見出しは本文と同じ大きさに戻して」
太字も色も囲みも全部使った資料は、結局どれも目立ちません。強調を減らすほど、残した強調が効きます。
気に入った部分を壊さずに、一部だけ直させる指示
直す場所が決まったところで、送るたびに全部作り変えられては前に進みません。「そこは触っていないのに……」と思った経験、ありませんか。

防ぐ方法は単純で、変えない範囲を先に書くことです。指示文の頭に固定する要素を並べ、そのあとに変更点を1つだけ書きます。「配色と書体と写真の位置はそのまま変えないで、見出しと日時の間隔だけ2倍にして」という形です。
なぜ、固定する側を先に書くのでしょうか。先に読ませたほうが守られやすく、あとから足した条件ほど流されやすいからです。
一度に2箇所以上を直させるのもやめてください。良くなった原因も悪くなった原因も分からなくなります。
手元に残した案を起点にすれば、次の指示は「この案の、ここだけ」と書けます。固定する範囲を書いた分だけ、壊れる範囲が狭くなります。
修正の往復を減らすには、どの順番で直すか
固定する範囲を書けるようになると、次に気になるのは「あと何回やれば終わるのか?」ではないでしょうか。回数を有限にするのは、直す順番です。
- 情報のまとまりを作る(近接)
- 位置をそろえる(整列)
- 同じ役割の見た目を統一する(反復)
- 重要なものに強弱をつける(対比)
- 最後に配色や装飾の細部を調整する
この順番を守る理由は、手戻りを出さないためです。先に色や飾りを整えても、あとから要素の配置が動いた時点で、その作業はやり直しになります。

1回の指示で直すのは1つの見方まで。見方は4つなので、1回に1つずつ進めれば4回前後で形になり、そこから先は好みの調整の領域だと考えてください。
よくある質問(FAQ)
指示文の形と直す順番まで押さえたら、あとは打ち始めるだけです。最後に、その手前で引っかかりやすい4つの疑問に答えます。
Q. 上司に「なんか違うんだよね」と言われたとき、どう聞き返せばいいですか?
4つの見方に分けて聞くと、相手も答えやすくなります。「情報のまとまりが分かりにくいですか、それとも位置がそろっていないですか」と選択肢の形で尋ねてください。相手がデザインの言葉を持っていなくても、示された中から選ぶことはできます。返ってきた答えは、そのままAIへの指示の対象になります。
Q.「余白を2倍に」のような数値は、AIがそのとおりに反映してくれますか?
正確な再現は期待しないでください。画像生成AIが位置や大小の指示にどれだけ従えるかを1,230件のプロンプトで測った評価では、21のモデルのうち総合スコアが最も高いモデルでも62.7%にとどまりました(arXiv、2026年1月)。それでも方向と程度は伝わるので、数値を書く価値はあります。
Q. 日本語のままで指示していいですか。英語のほうが伝わりますか?
日本語のままで大丈夫です。出力を左右するのは言語よりも、対象・方向・量が入っているかどうかです。英語の曖昧な一文より、日本語の具体的な一文のほうが狙った箇所に届きます。
Q. デザインの本を読んで、4つ以外の知識も勉強すべきですか?
目の前のチラシと社内資料を直すだけなら、4つで足ります。書体の細かい選び方や配色理論は、4つを使っても物足りなくなってから手を付けてください。今週の提出物に必要なのは、違和感を言葉にする語彙のほうです。
明日提出のチラシを、どこから書き直すか
ここまで読んで、自分の資料のどこが気持ち悪いのか、少し言葉になりそうだと感じてきたのではないでしょうか。その感覚が出てきていれば、もう指示文は書けます。
- 今開いているファイルを見て、気になる箇所を1つだけ言葉にする
- それが近接、整列、反復、対比のどれに当てはまるかを決める
- 固定する範囲を先に書き、続けて対象・方向・量を含む一文を送る
最初の1回は、いちばん気になる1箇所だけに絞って送ってみてください。全部を一度に直そうとした瞬間に、また「もっといい感じに」に戻ってしまいます。
指示に使える言葉が増えるほど、往復は減っていきます。センスを磨くより先に、今日打つ一文からその言葉を貯めていきましょう。